矯正と肩こりの意外な関係〜噛み合わせが姿勢に与える影響
噛み合わせと姿勢の関係を正しく理解する〜全身バランスと矯正治療の重要性〜

歯並びや噛み合わせの問題は、見た目の印象だけでなく、実は全身の健康にも関係しています。特にあまり知られていないのが、噛み合わせと姿勢、さらには肩や首の筋肉との関係です。
歯科臨床では、噛み合わせの不調を抱える方が首や肩のこりを訴えることが少なくありません。これは偶然ではなく、体の構造上のバランスが深く関係しているためです。
頭の重さは成人で約4〜6kgほどあります。この重い頭を支える首は7つの骨(頸椎)からなり、自然なカーブを描くことで、頭を安定させ、外力を分散する役割を担っています。
噛み合わせがずれると顎の位置が変化し、それに伴い頭部の位置も補正的に傾くため、首や肩の筋肉に余分な負担がかかることがあります。その結果、筋肉の緊張や違和感が生じることがあるのです。
ストレートネックと噛み合わせの関係
近年増えている「ストレートネック」とは、本来ゆるやかに湾曲している首の骨が真っ直ぐに近づいた状態を指します。スマートフォンやパソコンの長時間使用などの生活習慣が主な要因とされています。
この状態では頭が前方に傾くため、下顎が前下方向に引かれ、噛み合わせの位置が変化することがあります。また、顎を支える筋肉(こめかみや下顎部の筋群)に過度な緊張が生じる場合もあります。
さらに、顎を動かす筋肉は首から胸、肩甲骨へとつながっているため、姿勢の崩れが噛み合わせへ影響し、逆に噛み合わせのズレが姿勢を悪化させるという悪循環が起こることもあります。
噛み合わせが乱れる主な原因と影響

噛み合わせが乱れる原因は複数あり、以下のような要因が考えられます。
- ・虫歯や歯周病:痛みやぐらつきによって無意識に噛み方を変える
- ・抜歯後の放置:周囲の歯が傾く・伸びるなどの変化が起こる
- ・生活習慣:脚を組む、うつ伏せ寝、横向き姿勢などにより顎の位置が変化
- ・歯ぎしり・食いしばり:歯や骨に負担がかかり、歯周組織へ影響
- ・詰め物や被せ物の不適合:噛み合わせのバランスが崩れる
こうした噛み合わせのズレは口腔内だけにとどまらず、筋肉や骨格のバランスにまで影響を及ぼします。
たとえば片側の奥歯が低い場合、その側で咀嚼すると顎が後方へずれ、顔の筋肉に左右差が出ることがあります。結果として顔のバランスが変化したり、肩や背骨に負担がかかるなど、全身の姿勢にも影響することがあります。
矯正治療で噛み合わせと姿勢の調和を目指す

噛み合わせの不調を整える方法として、矯正治療が有効です。矯正治療は見た目の改善だけでなく、咀嚼や発音、姿勢の安定にも寄与する場合があります。
正しい噛み合わせを再構築することで、顎関節の動きが安定し、頭部や首の筋肉にかかる負担が減少することがあります。これにより、首や肩のこりの軽減につながるケースも見られます。
ただし、大人の矯正治療では、骨格が完成しているため、歯の移動と筋肉・骨格の適応に時間がかかることがあります。そのため、矯正治療を検討する際は、噛み合わせ・顎関節・姿勢などを総合的に評価し、適切な治療計画を立てることが重要です。
※矯正歯科治療は公的医療保険の対象外であり、自由診療となります。
治療期間は一般的に2〜3年、通院回数は24〜36回程度が目安です。
噛み合わせのセルフチェックと予防のポイント
簡単なセルフチェック方法として、次のような確認が可能です。
顔を上に向け、口を開け閉めしてから正面を向き、唇の力を抜いて軽く歯を合わせてみましょう。上下の歯が均等に当たっていれば、噛み合わせが比較的整っています。
噛み合わせを保つためには、以下のような日常の工夫が効果的です。
- ・定期的な歯科検診で噛み合わせを確認する
- ・長時間のスマートフォンやパソコン使用を控える
- ・姿勢を正しく保つよう意識する
- ・歯ぎしりや食いしばりを防ぐためのリラクゼーションを行う
まとめ:噛み合わせと姿勢のバランスを整えて健康を守る
噛み合わせと姿勢は密接に関係しており、その不調は顔のゆがみや筋肉の緊張、さらには全身のバランスにも影響します。矯正治療を通じて噛み合わせを整えることで、見た目だけでなく機能的な改善も期待できます。
ただし、成人矯正では骨格や筋肉の状態に個人差があるため、歯科医師による詳細な診断が欠かせません。大阪市北区にあるみなみもりまちN矯正歯科では、患者さまの状態や生活習慣に合わせた治療計画を提案しています。
まずは専門的なカウンセリングを受け、噛み合わせと姿勢の関係について正しく理解することから始めましょう。
【一般的なリスク・副作用について】
矯正治療では、歯の移動に伴い一時的な痛みや違和感を感じる場合があります。また、装置による口内炎、歯肉炎、治療後の後戻りなどが生じる可能性があります。詳しくは診療時に歯科医師がご説明いたします。
著者情報
院長 農端 健輔

経歴
2007年大阪歯科大学 卒業
2012年大阪歯科大学大学院私学研究科博士課程修了
2012年大阪歯科大学歯科矯正学講座において助教として勤務
2016年日本矯正歯科学会 認定医取得
2017年みなみもりまちN矯正歯科 開設
所属団体
近畿東海矯正歯科学会
日本矯正歯科学会
日本顎変形症学会
日本口蓋裂学会
World Federation of Orthodontists






