矯正治療中に歯茎が腫れる原因とは?【矯正中の歯肉炎・対処と予防】

矯正治療を始めると、「歯茎が腫れる」「歯磨きで出血する」といった症状に気づくことがあります。これは珍しいものではなく、矯正中にみられやすい口腔内の変化です。

歯を動かす過程では口腔環境が変わり、歯茎へ負担がかかる場面が出てきます。ここでは、なぜ腫れるのか、主な原因を整理します。

歯肉炎による腫れ(プラーク停滞が引き金)

歯と歯茎の境目にプラーク(歯垢)が残ると、歯肉に炎症が生じやすくなります。矯正装置の周囲は清掃が届きにくい部位が増えるため、発赤・腫脹・出血が起こりやすいのが特徴です。
※画像に当たる記述は、内容説明に置き換えています。

矯正装置による物理的刺激

ワイヤーやブラケットの端部が粘膜や歯肉に触れると、こすれや局所の傷が炎症の原因になります。過蓋咬合など咬合関係によっては、ブラケットが歯茎側に近くなることもあり、刺激部の腫れが生じやすくなります。

歯の移動に伴う組織反応

矯正治療では歯根膜などの歯周組織に力がかかるため、一時的に炎症反応や違和感が出ることがあります。これは移動過程で起こりうる生体反応で、清掃や通院で経過を確認しながら進めます。

歯間部の汚れ(動的治療で隙間が変化)

歯の移動により一時的な隙間が生じると、食片やプラークが溜まりやすい状態になります。見た目で隙間が少なくても、歯間部に残留物が停滞すると歯肉が腫れやすくなります。

親知らずの影響(清掃困難部のリスク)

親知らずは清掃が行き届きにくい位置にあり、周囲の歯肉炎や疼痛の原因になることがあります。矯正中はとくに奥の清掃が難しくなるため、症状の有無を定期的に確認しましょう。

ストレスや全身状態の変化

心身のストレスや体調の変化は免疫機能に影響し、歯茎が腫れやすくなることがあります。十分な睡眠・栄養・休養を意識し、体調と口腔状態を併せて管理することが大切です。

ホルモンバランスの影響(思春期・月経・妊娠など)

女性ホルモンの変動や思春期の成長段階では、歯肉の反応性が高まることがあります。矯正中にこれらの時期が重なると、歯肉の腫れが出やすいため、清掃と定期チェックをいつもより丁寧に行います。

全身疾患との関連(糖尿病など)

糖尿病など基礎疾患があると、炎症が起こりやすく治りにくい傾向があります。治療中に腫れが続く場合は、全身状態の確認主治医連携についても相談してください。

歯茎の腫れを予防するためのケア方法【毎日の実践ポイント】

丁寧なブラッシングの重要性

歯と歯茎の境目・装置の周囲を意識して、やわらかめの歯ブラシで力を入れ過ぎず磨きます。矯正用歯ブラシ・タフトブラシ・歯間ブラシ・フロスなどの補助清掃具を併用すると効率が上がります。個々の装置・歯列に合わせてブラッシング指導を受けると改善が早まります。

歯間清掃の習慣化

歯ブラシのみでは不十分なため、歯間ブラシやフロス毎日の仕上げとして取り入れます。矯正用のフロススレッダー等を使うと、ワイヤー下にも通しやすくなります。

定期的な歯科検診とクリーニング

専門的クリーニングで、セルフケアでは落としにくいプラーク・歯石を除去します。染め出しで磨き残しの傾向を把握し、清掃手順を更新していくと効果的です。

歯茎が腫れた時の対処法【セルフケアと受診の目安】

セルフケアの方法

腫れている部位はやさしく丁寧に清掃し、刺激の強い食事は控えます。ぬるま湯+少量の塩でのうがいは口腔清掃の一助になります(刺激を感じる場合は中止)。

矯正装置による刺激への対応

装置の角や端が当たる場合は矯正用ワックスで保護します。装置の位置・形状調整が必要なこともあるため、我慢せず早めに相談しましょう。

受診の目安

強い痛み・腫脹が続く・出血が止まらない・発熱などがあるとき、また1週間程度で改善が乏しいときは受診を検討してください。早期対応が悪化予防につながります。

矯正治療と歯周病の関係【歯肉炎から歯周炎へ進めないために】

歯肉炎を放置すると、歯槽骨まで炎症が及ぶ歯周炎に進行することがあります。矯正中はとくに境目の清掃定期検診が重要です。
禁煙は歯周病リスクの軽減にもつながります。治療終了後も新しい歯列に合った清掃法を継続し、定期チェックで安定を図りましょう。

まとめ~健康な歯茎で快適な矯正治療を~

矯正中の歯茎の腫れは、歯肉炎・装置刺激・歯の移動反応・歯間部の停滞・親知らず・全身要因などが複合して生じます。
丁寧なブラッシング・歯間清掃・定期的クリーニングを習慣化し、症状が出たら早めに相談しましょう。快適な治療環境を整えることが、結果の安定にもつながります。

みなみもりまちN矯正歯科では、装置に合わせた個別ケアの指導通院計画を案内しています。ケア方法や腫れが気になる際は、遠慮なくお問い合わせください。

著者情報

院長 農端 健輔

経歴

2007年大阪歯科大学 卒業
2012年大阪歯科大学大学院私学研究科博士課程修了
2012年大阪歯科大学歯科矯正学講座において助教として勤務
2016年日本矯正歯科学会 認定医取得
2017年みなみもりまちN矯正歯科 開設

所属団体

近畿東海矯正歯科学会
日本矯正歯科学会
日本顎変形症学会
日本口蓋裂学会
World Federation of Orthodontists

 

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