矯正治療中の食事制限|安心して治療を進めるための基本

矯正治療を始めると、「どんな食べ物に気をつければいいのか」「普段通りの食事ができるのか」と不安を感じる方は多いものです。基本的に矯正治療中でも極端な食事制限はありませんが、矯正装置を守り、虫歯や歯周病を予防するためにはいくつかの注意点があります。
※矯正歯科治療は公的健康保険の適用外の自由診療です。治療期間の目安は2〜3年、通院回数は24〜36回程度です。進行には個人差があり、装置の破損や虫歯などによって治療期間が延びることがあります。

矯正治療と食事制限の基本的な考え方

食事制限の内容は、使用している装置の種類によって異なります。ワイヤー矯正とマウスピース型矯正では注意点が大きく変わります。
正しく理解して食事の工夫を行うことは、スムーズに治療を進めるために大切です。

矯正中に注意が必要なのは大きく分けて以下の2点です。

  • ・装置の破損を防ぐ

  • ・虫歯や歯周病のリスクを減らす

ワイヤー矯正中に注意すべき食べ物

ワイヤー矯正はブラケットとワイヤーを歯に固定するため、食事時に注意が必要です。特に以下の食品は注意しましょう。

硬い食べ物

リンゴやニンジンをそのままかじるとブラケットが外れる可能性があります。小さく切って奥歯で噛むようにしましょう。
お煎餅やフランスパンなどの硬い食品も同様に、小さくして食べる、または柔らかくしてから食べる工夫が必要です。

粘着性の高い食べ物

キャラメルやガムなどは装置に付着しやすく、破損や変形の原因になります。特に柔らかいキャンディ類も注意が必要です。

着色しやすい食品・飲み物

カレー、コーヒー、赤ワインなどは装置の一部を変色させることがあります。治療効果には影響しませんが、見た目が気になる場合は食後にうがいや歯磨きを行いましょう。

マウスピース矯正(アライナー矯正)の食事ルール

マウスピース型矯正(マウスピース型矯正歯科装置)は、取り外し可能なため食事制限は少なめです。
ただし、食事の際には必ずマウスピースを外すことが大切です。

外さずに食事をすると起こる問題

  • ・装置の破損や変形

  • ・食べ物の糖分・酸が装置と歯の間に残り虫歯リスクが高まる

  • ・着色の原因になる

飲み物について

装置を装着したまま飲んで良いのは「水」または「無糖・無酸性の炭酸水」に限られます。コーヒーやジュースなどは虫歯や着色の原因になるため、必ず外してから飲みましょう。

矯正治療中に特に注意すべき食品一覧

矯正方法に関わらず共通して注意が必要な食べ物があります。

  • ・極端に硬い食品(氷、硬いナッツ、固いせんべい、カリカリのパン耳など)

  • ・粘着性の高い食品(キャラメル、ガム、柔らかいキャンディなど)

  • ・着色しやすい食品(カレー、コーヒー、赤ワイン、ベリー類など)

これらは完全に避ける必要はありませんが、切る・柔らかくする・食後にうがいを行うなどの工夫を心がけましょう。

食事を楽しむための工夫

外食時の対応

  • ・携帯用の歯ブラシセットを持参

  • ・マウスピース矯正の場合は清潔なケースを用意

  • ・ペットボトルの水でうがい

  • ・歯間ブラシやフロスを持ち歩く

調整直後や痛みがある時期

  • ・柔らかい食べ物(うどん、スープ、スクランブルエッグなど)を選ぶ

  • ・食材を小さく切って奥歯で噛む

  • ・熱すぎる・冷たすぎる食べ物は控える

栄養バランスを保つ工夫

矯正治療中でも栄養バランスは重要です。

  • ・カルシウム(乳製品、小魚、豆腐など)

  • ・ビタミンD(魚、きのこ、卵など)

  • ・ビタミンC(野菜、果物)

  • ・タンパク質(肉、魚、豆類)

硬い食材は煮る・スープにする・スムージーにするなどで取り入れましょう。

よくある質問(Q&A)

Q1: お酒は飲んでも大丈夫ですか?
飲酒自体は問題ありません。ただし、マウスピース矯正の場合は装置を外してからにしましょう。糖分を含む飲料は虫歯リスクがあるため注意が必要です。

Q2: 矯正中でも食べられるおやつは?
プリン、ヨーグルト、バナナなど柔らかい食品がおすすめです。糖分摂取後は必ず歯磨きまたはうがいをしましょう。

Q3: 調整後に噛みにくいときは?
柔らかい食事に切り替え、食べ物を小さく切るなどの工夫を。痛みが強い場合は歯科医師に相談してください。

まとめ|矯正治療を快適に進めるための食事管理

矯正治療中の食事制限は、装置を壊さないことと口腔トラブルを防ぐためのものです。
ワイヤー矯正では硬い食べ物や粘着性食品を避け、マウスピース矯正では必ず外して食事を行いましょう。

矯正歯科治療は自由診療であり、治療期間や回数には個人差があります。また、虫歯や装置の破損などによって治療が延長する可能性もあります。

不安や疑問があれば、必ず担当の歯科医師に相談してください。正しい知識と工夫で、矯正治療をより快適に進めることができます。

著者情報

院長 農端 健輔

経歴

2007年大阪歯科大学 卒業
2012年大阪歯科大学大学院私学研究科博士課程修了
2012年大阪歯科大学歯科矯正学講座において助教として勤務
2016年日本矯正歯科学会 認定医取得
2017年みなみもりまちN矯正歯科 開設

所属団体

近畿東海矯正歯科学会
日本矯正歯科学会
日本顎変形症学会
日本口蓋裂学会
World Federation of Orthodontists

みなみもりまちN矯正歯科