奥歯の噛み合わせは、見た目では気づきにくいものの、お口の健康だけでなく全身のバランスにも大きな影響を与えます。噛み合わせが乱れると、食事の際に効率的に噛めないだけでなく、歯周病や顎関節の不調につながることもあります。

歯科医師として、数多くの患者さんの噛み合わせを診てきましたが、特に奥歯の噛み合わせは前歯よりも見落とされやすく、機能面で非常に重要な要素です。

奥歯の噛み合わせが悪いと起こるトラブル

奥歯の噛み合わせが悪い場合、まず食事の咀嚼効率が低下します。奥歯は食べ物をすり潰す役割を持つため、しっかり噛めない状態では胃腸に負担をかける可能性があります。

また、噛み合わせの不均衡により一部の歯へ過度な力が加わると、歯の摩耗や歯周組織の炎症を引き起こすことがあります。さらに、顎関節に余分な負担がかかると「顎関節症(がくかんせつしょう)」の要因にもなります。

顎関節症では、口の開閉時に痛みや音が出ることがあり、進行すると頭部や頸部の筋肉にも緊張を生じる場合があります。

噛み合わせと全身の関係

噛み合わせは口の中だけでなく、全身の姿勢や筋肉バランスにも影響します。片側で噛む癖などにより咬合の偏りがあると、顔の筋肉の発達に左右差が生じ、顎や首、肩のバランスにも歪みが出ることがあります。

また、歯ぎしりや食いしばりが起こりやすくなり、顎や咀嚼筋への負担が増加します。このような状態が長く続くと、顎関節や周囲の筋肉が慢性的に緊張し、不快感が現れることもあります。

矯正治療による奥歯の噛み合わせ改善

奥歯の噛み合わせを整える方法としては、矯正治療が有効です。矯正治療は見た目の改善だけでなく、機能的な咬合を実現する目的で行われます。

主な治療法には「ブラケット矯正」と「マウスピース型カスタムメイド矯正(歯科)装置(インビザライン)」があります。

  • ・ブラケット矯正:歯にブラケットを装着し、ワイヤーで少しずつ歯を移動させます。奥歯の位置関係を正確に調整できるため、幅広い症例に対応可能です。

  • ・マウスピース型矯正装置:透明なマウスピースを用いて歯を動かします。取り外しができ、日常生活への影響が少ないのが特徴です。ただし、奥歯の大きな移動が必要な場合には適応外となることがあります。

矯正治療を始める前には、レントゲンや模型による精密検査を行い、噛み合わせの状態を分析します。その上で、治療期間(一般的に2〜3年間)、通院回数(24〜36回)などを含む治療計画を立案します。
※矯正治療は公的健康保険の適用外の自由診療となります。

噛み合わせ改善で期待できる変化

奥歯の噛み合わせを整えることで、以下のような効果が期待できます。

  • ・咀嚼効率の向上:食べ物をしっかり噛めるようになり、胃腸への負担が軽減されます。

  • ・口腔衛生の改善:歯並びが整うことで歯ブラシが届きやすくなり、虫歯や歯周病のリスクを抑えられます。

  • ・顎関節への負担軽減:バランスの取れた噛み合わせにより、顎関節への圧力が分散され、違和感の軽減につながります。

  • ・姿勢バランスの安定:噛み合わせが整うことで、顎の位置や頭部の角度が自然な状態に戻り、首・肩の筋肉への負担が和らぐ場合もあります。

矯正治療を検討する際の注意点

矯正治療を検討する場合は、まず矯正歯科を中心に経験を積んだ歯科医師による診断を受けましょう。奥歯の噛み合わせは複雑な構造を持つため、専門的な分析と治療計画が必要です。

また、治療期間・費用・通院頻度についても事前に確認しておくことが大切です。矯正治療は自由診療であり、症例によって費用が異なります。通院しやすい立地や診療時間も選定のポイントになります。

大阪市北区の「みなみもりまちN矯正歯科」では、日本矯正歯科学会認定医が在籍し、患者さまの噛み合わせに配慮した矯正治療を行っています。
(※当院は公的保険外の自由診療であり、治療期間2〜3年・通院回数24〜36回が一般的です。)

まとめ:奥歯の噛み合わせを整えて健康的な毎日を

奥歯の噛み合わせは、見た目以上に全身の健康に影響します。噛み合わせの不調は歯周病や顎関節症のリスクを高めるほか、筋肉の緊張や姿勢のバランスにも関わります。

矯正治療により咬合を整えることで、咀嚼効率の改善、口腔内の清掃性向上、顎関節への負担軽減などが期待できます。

噛み合わせに違和感がある方は、まず歯科医師にご相談ください。正確な診断をもとに、あなたの口腔環境に合った最適な治療方法をご提案いたします。

【一般的なリスク・副作用について】

矯正治療では、歯の移動に伴い一時的に歯の痛みや違和感を感じることがあります。また、装置による口内炎や歯肉炎、治療後の後戻りなどの可能性もあります。詳細は初回のカウンセリング時にご説明いたします。

著者情報

院長 農端 健輔

経歴

2007年大阪歯科大学 卒業
2012年大阪歯科大学大学院私学研究科博士課程修了
2012年大阪歯科大学歯科矯正学講座において助教として勤務
2016年日本矯正歯科学会 認定医取得
2017年みなみもりまちN矯正歯科 開設

所属団体

近畿東海矯正歯科学会
日本矯正歯科学会
日本顎変形症学会
日本口蓋裂学会
World Federation of Orthodontists

みなみもりまちN矯正歯科