部分矯正と全体矯正の違い〜認定医が教える選び方のポイント
「歯並びを治したいけど、どんな矯正方法がいいのかな?」
歯列矯正を検討する際、多くの方が部分矯正と全体矯正のどちらを選ぶべきか迷われます。費用や期間、効果の違いなど、知っておくべき情報はたくさんあります。
この記事では、矯正歯科認定医の立場から、部分矯正と全体矯正の違いや、それぞれのメリット・デメリット、そして自分に合った矯正方法の選び方について詳しく解説します。
部分矯正と全体矯正の基本的な違い

まずは部分矯正と全体矯正の基本的な違いについて説明しましょう。名前からも想像できるように、治療範囲が大きく異なります。
部分矯正は、前歯など見た目に影響のある一部分のみを治療する方法です。主に「前歯のすき間を閉じたい」「軽度の出っ歯を改善したい」といった限定的な悩みに対応します。装置も簡易なものになるため、費用を抑えることができ、短期間で治療を終えることができるのが特徴です。
一方、全体矯正は上下の歯すべてを対象とし、見た目だけでなく噛み合わせも含めた総合的な治療を行います。歯全体のバランスや機能面での改善を目指すため、より根本的な解決が可能です。
両者の主な違いは以下の3点です。
1. 動かせる歯の範囲が違う
部分矯正は前歯など限られた範囲の歯だけを動かします。そのため、大きな歯の移動や奥歯の位置調整などは難しいという制限があります。
全体矯正では奥歯も含めた歯列全体を動かすことができるため、より複雑な歯並びの問題にも対応可能です。噛み合わせの調整や顎のバランス改善なども行えます。
2. 費用相場が大きく異なる
矯正治療の費用は、動かす歯の範囲や装置の種類によって変わります。部分矯正は一部の歯のみを動かすため、費用は比較的抑えられます。
部分矯正の費用相場は約10万〜60万円程度です。マウスピース矯正では10万〜40万円、ワイヤー矯正では30万〜70万円ほどが目安となります。
全体矯正は歯列全体を整えるため、費用も高くなります。表側ワイヤー矯正で60万〜130万円程度、裏側矯正では100万〜170万円程度、マウスピース矯正でも60万〜100万円程度が相場です。
3. 治療期間に大きな差がある
部分矯正は限られた範囲の歯を動かすため、治療期間も比較的短くなります。症例にもよりますが、短ければ3ヶ月、平均で半年〜1年程度で完了することが多いです。
全体矯正では歯列全体のバランスを整えるため、1〜3年ほどの治療期間を要するのが一般的です。抜歯を伴う場合や、噛み合わせに大きな問題がある場合は、さらに時間がかかることもあります。
部分矯正のメリットとデメリット
部分矯正には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。実際の治療を検討する前に、しっかり理解しておきましょう。

部分矯正のメリット
部分矯正の最大のメリットは、短期間で治療を終えられることと費用を抑えられることです。具体的には以下のようなメリットがあります。
- 短い治療期間:前歯など限られた範囲の歯を動かすため、半年〜1年ほどの短い期間で終了します。結婚式やイベントに間に合わせたいなど、期限がある方に向いています。
- 費用が抑えられる:全体矯正と比較すると、装置も簡易的なものになるため、費用を抑えることができます。経済的な負担を軽減したい方にとって大きなメリットです。
- 気軽に始めやすい:費用も期間も抑えられるため、矯正治療へのハードルが低く、気軽に始めやすいのが特徴です。
- 痛みが少ない:歯の大幅な移動がないため、全体矯正と比べて痛みを感じにくいことが多いです。
気になる部分だけを治したい方や、とりあえず見た目を改善したいという方には、部分矯正は魅力的な選択肢です。
部分矯正のデメリット
一方で、部分矯正にはいくつかの重要なデメリットもあります。
- スペースの制限:歯を並べるためには十分なスペースが必要ですが、部分矯正ではこのスペースを確保するのが難しい場合があります。そのため、歯の両サイドを削って細くする必要が生じることもあります。
- 噛み合わせが悪化するリスク:前歯だけを動かすことで、噛み合わせのバランスが崩れる可能性があります。噛み合わせが悪いと、肩こりや頭痛の原因になったり、特定の歯に負担がかかって痛めたりする恐れもあります。
- 治療の選択肢が限られる:部分矯正では治療できる範囲が限られるため、複雑な歯並びの問題には対応できないことがあります。
- 後戻りのリスク:部分矯正は全体のバランスを考慮していないため、治療後に歯が元の位置に戻りやすい傾向があります。
私の臨床経験からも、部分矯正だけでは根本的な問題解決にならないケースをよく見てきました。特に噛み合わせに問題がある場合は、部分矯正だけでは不十分なことが多いです。
全体矯正のメリットとデメリット
次に、全体矯正のメリットとデメリットについて見ていきましょう。
全体矯正のメリット
全体矯正は、見た目だけでなく機能面も含めた総合的な改善が可能です。主なメリットは以下の通りです。
- 治療の選択肢が広い:全体矯正では、抜歯矯正や非抜歯矯正、顎の拡大など、さまざまな治療法を選択できます。そのため、複雑な歯並びの問題にも対応可能です。
- 全体的なバランスの改善:歯並びだけでなく、噛み合わせや顎のバランスも含めた総合的な改善が可能です。これにより、見た目の美しさと機能性の両方を獲得できます。
- 長期的な安定性:全体のバランスを考慮した治療を行うため、治療後の後戻りが少なく、長期的に安定した結果を得られることが多いです。
- 健康面でのメリット:正しい噛み合わせは、顎関節症の予防や口腔衛生の向上につながります。また、正しい歯並びは歯磨きもしやすくなるため、虫歯や歯周病のリスク低減にも貢献します。
矯正治療は見た目の改善だけでなく、お口の健康を長期的に維持するための投資でもあります。全体矯正はその点で大きなメリットがあるのです。
全体矯正のデメリット
一方で、全体矯正にはいくつかのデメリットも存在します。
- 治療期間が長い:全体矯正は1〜3年ほどの長期間を要します。短期間で結果を求める方には向かないかもしれません。
- 費用が高い:全体矯正は60万〜170万円程度と高額になります。経済的な負担が大きいため、計画的な資金準備が必要です。
- 装置の違和感:矯正装置を装着することで、一時的に話しづらさや食べづらさを感じることがあります。特に裏側矯正では、舌が当たって発音しづらくなることもあります。
- 定期的な通院が必要:月に1回程度の定期的な通院が必要となり、時間的な拘束があります。
全体矯正は費用と時間の投資が必要ですが、その分、より根本的で長期的な改善が期待できます。
私が臨床で感じるのは、最初は部分矯正を希望されていた患者さんも、メリット・デメリットをしっかり理解すると、全体矯正を選ばれるケースが多いということです。長い目で見たときの満足度は、全体矯正の方が高いことが多いのです。
自分に合った矯正方法の選び方
では、部分矯正と全体矯正、どちらを選ぶべきなのでしょうか?自分に合った矯正方法を選ぶためのポイントを解説します。
歯並びの状態で選ぶ
まず最も重要なのは、現在の歯並びの状態です。以下のような場合は、それぞれに適した矯正方法があります。
- 部分矯正が向いている場合:
- 前歯の軽度のすき間や凸凹を改善したい
- 以前に矯正治療を受けた後の軽度の後戻りを修正したい
- 噛み合わせに問題がなく、見た目だけを改善したい
- 全体矯正が向いている場合:
- 歯並びの乱れが全体的に見られる
- 噛み合わせに問題がある
- 出っ歯や受け口など、顎の位置に問題がある
- 歯が重なり合っている、または大きなすき間がある
- 歯の傾きが強い
実際には、矯正認定医による精密検査を受けて、適切な治療法を判断することが重要です。レントゲンや歯型を取るなどの検査を行い、総合的に判断します。
優先したい条件で選ぶ
次に、ご自身が何を優先したいかによっても選択は変わってきます。
- 費用を優先する場合:予算に制約がある場合は、部分矯正の方が費用を抑えられます。ただし、後々全体矯正が必要になる可能性も考慮しましょう。
- 期間を優先する場合:短期間で結果を出したい場合は、部分矯正の方が早く完了します。結婚式や就職など、期限がある場合に検討する価値があります。
- 見た目を優先する場合:矯正中の見た目を気にする場合は、マウスピース矯正や裏側矯正など、目立ちにくい装置を選ぶという選択肢もあります。
- 長期的な健康を優先する場合:噛み合わせの改善や長期的な安定性を重視するなら、全体矯正がおすすめです。
これらの条件を総合的に考慮して、自分に最適な矯正方法を選びましょう。
認定医のアドバイスを参考にする

最終的には、矯正認定医のアドバイスを参考にすることが重要です。認定医は患者さんの口腔内の状態を詳しく診査し、最適な治療法を提案してくれます。
私の臨床経験からも、患者さん自身が思っている以上に複雑な問題を抱えているケースは少なくありません。「前歯だけ治したい」と来院された方でも、実際には噛み合わせに問題があり、全体矯正が必要なケースもあります。
信頼できる矯正認定医に相談し、十分な説明を受けた上で決断することをおすすめします。
矯正治療の流れと注意点
矯正治療を始める前に、治療の流れと注意点についても知っておきましょう。
矯正治療の一般的な流れ
矯正治療は一般的に以下のような流れで進みます。
- 初診相談:まずは無料相談などで、治療の大まかな説明を受けます。
- 精密検査:レントゲン撮影や歯型採取、口腔内写真撮影などの検査を行います。
- 治療計画の説明:検査結果をもとに、治療計画や費用、期間などの詳細な説明を受けます。
- 矯正装置の装着:治療計画に基づいて、矯正装置を装着します。
- 定期的な調整:約1ヶ月に1回のペースで通院し、装置の調整を行います。
- 装置の除去:目標とする歯並びが達成されたら、矯正装置を外します。
- 保定期間:後戻りを防ぐため、リテーナーと呼ばれる保定装置を装着します。
部分矯正と全体矯正では、治療期間や通院回数に違いがありますが、基本的な流れは同じです。
矯正治療中の注意点
矯正治療中は、以下のような点に注意が必要です。
- 丁寧な歯磨き:矯正装置があると歯垢が溜まりやすくなるため、より丁寧な歯磨きが必要です。
- 食事制限:特にワイヤー矯正の場合、硬いものや粘着性の高い食べ物は避けた方が良いでしょう。
- 定期的な通院:予約をしっかり守り、定期的に調整を受けることが重要です。
- 痛みへの対処:装置の調整後は一時的に痛みを感じることがありますが、数日で和らぐことが多いです。
- 保定装置の使用:治療後は指示された期間、保定装置を使用することが後戻り防止に重要です。
これらの注意点は、部分矯正でも全体矯正でも共通して重要です。特に保定期間の管理は、治療結果を長期的に維持するために欠かせません。
まとめ:あなたに合った矯正方法を選ぼう
部分矯正と全体矯正、それぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説してきました。最後に、選択のポイントをまとめます。
- 部分矯正は、前歯など限られた範囲の歯並びを改善する方法で、費用が抑えられ、短期間で治療を終えられるメリットがあります。ただし、噛み合わせの問題には対応できず、後戻りのリスクもあります。
- 全体矯正は、歯列全体のバランスや噛み合わせも含めた総合的な改善が可能で、長期的な安定性が期待できます。ただし、費用が高く、治療期間も長くなります。
- 選択のポイントは、現在の歯並びの状態、優先したい条件(費用・期間・見た目・健康面)、そして認定医のアドバイスを総合的に考慮することです。
矯正治療は長期間にわたる取り組みであり、日常生活にも影響します。そのため、十分な情報を得た上で、自分に合った選択をすることが大切です。
最終的には、信頼できる矯正認定医に相談し、ご自身の状態や希望に合った最適な治療法を選びましょう。
当院では初回相談を無料で行っており、患者さんお一人おひとりの状態やご希望に合わせた最適な矯正プランをご提案しています。歯並びでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
美しい歯並びは、自信にあふれた笑顔につながります。あなたに合った矯正方法で、理想の歯並びを手に入れましょう。
詳しい情報や無料相談のご予約は、みなみもりまちN矯正歯科までお気軽にお問い合わせください。
著者情報
院長 農端 健輔

経歴
2007年大阪歯科大学 卒業
2012年大阪歯科大学大学院私学研究科博士課程修了
2012年大阪歯科大学歯科矯正学講座において助教として勤務
2016年日本矯正歯科学会 認定医取得
2017年みなみもりまちN矯正歯科 開設
所属団体
近畿東海矯正歯科学会
日本矯正歯科学会
日本顎変形症学会
日本口蓋裂学会
World Federation of Orthodontists






