矯正歯科の選び方〜失敗しない10のポイントと注意点
「歯並びを治したい」と思ったとき、どの矯正歯科を選べばいいのか迷うことがありませんか? 矯正治療は長期間にわたり、費用も決して安くありません。だからこそ、信頼できる歯科医院選びが重要なのです。

私は日本矯正歯科学会認定医として多くの患者さんの歯並びを治療してきました。その経験から、失敗しない矯正歯科の選び方をお伝えします。
この記事では、矯正歯科を選ぶ際の10のポイントと、よくある失敗例、そして後悔しないための注意点を詳しく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、あなたに合った矯正歯科選びの参考にしてください。
矯正歯科とは?一般歯科との違い
矯正歯科は、歯並びや噛み合わせの問題を専門的に治療する歯科医院です。歯の位置や顎の発育を適切に整えることで、見た目の美しさだけでなく、口内の機能性を向上させることを目的としています。
一般歯科との大きな違いは、その専門性にあります。矯正歯科では主に歯列矯正の治療を行っており、歯列矯正に特化しています。
矯正歯科と一般歯科の違いを具体的に見てみましょう。
- 矯正歯科:歯並びや噛み合わせを改善する専門の歯科医院。歯列矯正に特化した治療を提供し、基本的に歯を削らない治療を行います。
- 一般歯科:虫歯や歯周病、親知らずの抜歯など一般的な歯科治療を行います。矯正治療は対応していない場合もあります。
歯列矯正を受けるなら、矯正歯科を選ぶことをおすすめします。矯正の知識や実績が豊富な先生がいるため、治療の成功率も高くなります。
矯正歯科選びで失敗しないための10のポイント
矯正歯科を選ぶ際には、以下の10のポイントを確認することで、失敗のリスクを大幅に減らすことができます。
1. 日本矯正歯科学会の認定医が在籍しているか
まず最も重要なポイントは、日本矯正歯科学会の認定医が在籍しているかどうかです。認定医の資格を取得するには、5年以上の矯正歯科についての研修を受け、学会の試験に合格する必要があります。
認定医がいる歯科医院であれば、矯正歯科の技術・知識が一定水準以上あると判断できます。日本矯正歯科学会のホームページで認定医を確認することができますので、ぜひチェックしてみてください。
2. 矯正治療に必要な設備が整っているか

矯正治療には専門的な設備が必要です。特に重要なのが「セファログラム」と呼ばれる頭部X線規格写真の撮影装置と、歯科用CTです。
セファログラムは、顎の上下の大きさ・骨格のズレ・あごの形・歯の傾斜角・口元の全体的なバランスなど、肉眼では分からない部分を分析・診断するために不可欠です。
また、3DCTがあれば、より精密な診断が可能になります。一般的な歯科医院で使用する「パノラマレントゲン」は、歯や歯の根本のみを映した平面画像のため、CTよりも得られる情報が限られています。
3. 複数の矯正装置を取り扱っているか
歯並びを整えるための矯正装置には、複数の種類があります。患者さんの症状や歯の状態によって、最適な矯正装置は異なります。
例えば、目立たない矯正を希望する場合、マウスピース型矯正装置が適していることがありますが、すべての症例に対応できるわけではありません。複数の矯正装置を取り扱っている医院であれば、あなたの状態や希望に合わせた最適な治療法を提案してもらえる可能性が高くなります。
4. コミュニケーションが取りやすいか
矯正治療は長期間にわたるため、担当医とのコミュニケーションが非常に重要です。初回相談時に、あなたの悩みや希望をしっかりと聞いてくれるか、分かりやすく説明してくれるかをチェックしましょう。
質問に対して丁寧に答えてくれない、威圧的な態度をとる、説明が専門用語だらけで理解しづらいといった場合は注意が必要です。
良好なコミュニケーションが取れる医師のもとで治療を受けることで、不安や疑問を解消しながら安心して治療を進めることができます。
5. 治療計画が明確で、説明が丁寧か
信頼できる矯正歯科医は、治療計画を明確に示し、丁寧に説明してくれます。具体的には以下のような点が説明されるべきです。

- 現在の歯並びの状態と問題点
- 治療の目標と期待できる結果
- 治療方法の選択肢とそれぞれのメリット・デメリット
- 治療期間の見込み
- 治療費の総額と支払い方法
- 治療後のメンテナンス方法
これらの点について分かりやすく説明してくれる医院は、患者さんとの信頼関係を大切にしていると言えるでしょう。
6. 費用設定が明確か
矯正治療は保険適用外の自由診療であるため、医院によって費用が異なります。治療費の総額だけでなく、分割払いの有無、追加費用が発生する可能性などについても確認しましょう。
費用体系には「トータルフィー制」と「処置別支払い制」があります。トータルフィー制は治療費の総額が初めに提示され、追加料金が発生しにくいのが特徴です。一方、処置別支払い制は通院のたびに費用が発生するため、治療が長引くと予想以上に費用がかかることがあります。
どちらが良いかは一概に言えませんが、費用設定が明確で、追加費用についても事前に説明してくれる医院を選ぶことが重要です。
7. 矯正中のトラブルに対応してくれるか
矯正治療中は、装置が外れたり、痛みが生じたりするトラブルが起こることがあります。そのような場合に迅速に対応してくれる体制が整っているかどうかも重要なポイントです。
緊急時の連絡方法や対応可能な時間帯、休日の対応などについて事前に確認しておくと安心です。また、矯正専門の歯科衛生士がいるかどうかも、トラブル対応の質に関わってきます。
万が一のトラブルに備えて、アクセスの良い場所にある医院を選ぶことも一つの方法です。
8. 診療日が月の半分以上あるか
矯正治療は定期的な通院が必要です。診療日が少ない医院だと、自分の都合に合わせた予約が取りづらくなり、治療が長引く原因になることがあります。
月の半分以上診療している医院であれば、比較的スムーズに通院できるでしょう。また、平日だけでなく土曜日や夜間も診療しているかどうかも、仕事や学校で忙しい方にとっては重要なポイントです。
診療日や時間帯については、医院のホームページや電話で確認できますので、自分のライフスタイルに合った医院を選びましょう。
9. よく訓練された有資格のスタッフがいるか
矯正治療は医師だけでなく、歯科衛生士などのスタッフのサポートも重要です。特に矯正治療に精通した歯科衛生士がいると、装置の調整や口腔ケアの指導など、きめ細かなサポートを受けられます。
また、受付スタッフの対応も医院選びの参考になります。丁寧で親切な対応をしてくれる医院は、患者さんへの配慮が行き届いている可能性が高いです。
初回相談時にスタッフの対応や雰囲気をチェックしてみましょう。
10. 通いやすい場所にあるか
矯正治療は数年にわたることもあるため、通院のしやすさは非常に重要です。自宅や職場から近い、交通アクセスが良いなど、通いやすい立地にある医院を選ぶことで、治療の継続がしやすくなります。
特に、矯正装置の調整は1〜2ヶ月に1回程度の頻度で行われるため、長期間通い続けることを考慮して医院を選びましょう。
駐車場の有無や公共交通機関からのアクセスなども確認しておくと良いでしょう。
矯正治療でよくある失敗例と対策
矯正治療を受ける際に、どのような失敗が起こり得るのか、そしてそれを防ぐためにはどうすれば良いのかを知っておくことも重要です。
1. 治療が終わらない・費用が高くついてしまった
矯正治療では、当初予定していた期間よりも長引くケースがあります。その結果、追加の通院や費用が発生することがあります。
これを防ぐためには、治療前に医師から詳細な治療計画と期間の説明を受け、総額制(トータルフィー)の料金システムを採用している医院を選ぶことが有効です。総額制であれば、治療期間が延長しても追加費用が発生しにくくなります。
また、治療中は医師の指示をしっかり守り、装置の装着時間を守ることも重要です。特にマウスピース矯正の場合、装着時間が短いと予定通りに歯が動かず、治療期間が延びる原因になります。
2. 仕上がりが期待と異なる
治療後の歯並びや顔の印象が、イメージしていたものと異なるというケースもあります。
これを防ぐためには、治療前に医師とよく相談し、治療後のイメージを共有することが大切です。可能であれば、シミュレーション画像を見せてもらったり、似たケースの治療例を確認したりすると良いでしょう。
また、治療の途中経過についても定期的に医師と確認し、必要に応じて調整を依頼することも重要です。
3. 顎関節症になった
不適切な矯正治療によって、顎関節症を発症するケースがあります。顎関節症になると、顎の痛みや開口障害、顎の音などの症状が現れることがあります。
これを防ぐためには、矯正前に顎関節の状態をしっかりと検査してもらい、必要に応じて顎関節症の専門医と連携している矯正歯科を選ぶことが重要です。
また、治療中に違和感や痛みを感じたら、すぐに医師に相談することも大切です。早期発見・早期対応が症状の悪化を防ぎます。
4. 後戻りが起きた
矯正治療が終了した後、時間の経過とともに歯が元の位置に戻ってしまう「後戻り」が起こることがあります。
後戻りを防ぐためには、治療後のリテーナー(保定装置)の装着が非常に重要です。医師の指示通りにリテーナーを装着し、定期的なメンテナンスを受けることで、後戻りのリスクを減らすことができます。
リテーナーの種類や装着期間についても、事前に医師とよく相談しておくことをおすすめします。
矯正歯科選びで注意すべきポイント
矯正歯科を選ぶ際には、以下の点にも注意が必要です。
認定医と専門医(臨床指導医)の違いを理解する
日本矯正歯科学会には「認定医」と「専門医」(現在は臨床指導医)という資格があります。基本的には専門医の方が上位の資格ですが、専門医の数は限られています。
認定医であれば矯正歯科医として基本的な資格を持っていると判断できますので、最低でも認定医の資格を持つ歯科医師がいる医院を選ぶことをおすすめします。
ただし、資格だけでなく、実際の治療実績や患者さんの評判も参考にすることが大切です。
価格の安さだけで選ばない
矯正治療は決して安くない治療ですが、価格の安さだけで医院を選ぶのは危険です。「最安」や「格安」をうたう医院では、治療の質が低かったり、途中で追加費用が発生したりするケースもあります。
料金だけでなく、医師の経験や実績、設備の充実度、アフターケアの内容なども含めて総合的に判断しましょう。
長い目で見れば、適切な治療を受けることが結果的にコストパフォーマンスが良いことが多いです。
初診相談で確認すべきこと
初診相談(カウンセリング)は、医院選びの重要な機会です。以下の点を確認しておくと良いでしょう。
- 現在の歯並びの状態と問題点
- 治療方法の選択肢とそれぞれのメリット・デメリット
- 治療期間の見込み
- 治療費の総額と支払い方法
- 治療中・治療後のリスクや注意点
- 装置の種類や特徴
- 通院頻度
- 治療後のメンテナンス方法
これらの質問に対して丁寧に答えてくれる医院は信頼できる可能性が高いです。
年代別・症状別の矯正歯科選びのポイント
矯正治療は年齢や症状によって考慮すべきポイントが異なります。ここでは、年代別・症状別のポイントを解説します。
子どもの矯正
子どもの矯正では、成長発育を利用した治療が可能です。以下のポイントを考慮しましょう。
- 小児矯正の経験が豊富な医師がいるか
- 子どもが通いやすい環境(キッズスペースなど)があるか
- 成長に合わせた段階的な治療計画を提案してくれるか
- 保護者への説明がわかりやすいか
子どもの場合、矯正治療と並行して虫歯予防や口腔習慣の指導も重要です。総合的なケアができる医院を選ぶと良いでしょう。
大人の矯正
大人の矯正では、審美性や通院のしやすさが重要になります。以下のポイントを考慮しましょう。
- 目立ちにくい装置(マウスピース矯正、裏側矯正など)の選択肢があるか
- 仕事や生活スタイルに合わせた通院スケジュールが組めるか
- 歯周病などの成人特有の口腔内問題にも対応できるか
- 必要に応じて他の治療(インプラント、補綴など)と連携できるか
大人の場合、歯の移動速度が子どもより遅いため、治療期間が長くなる傾向があります。そのため、長期的な通院を考慮した医院選びが重要です。
症状別のポイント
症状によっても選ぶべき矯正歯科のポイントが異なります。
- 出っ歯・受け口:顎の骨格的な問題を評価できる設備と経験を持つ医院
- すきっ歯・叢生(歯並びのガタガタ):様々な矯正装置を取り扱い、症例に合わせた治療法を提案できる医院
- 開咬(前歯が閉じない):顎関節や咬合の専門知識を持つ医院
- 顎関節症を伴う場合:顎関節症の治療経験が豊富な医院、または顎関節症専門医と連携している医院
症状が複雑な場合は、より専門性の高い医院や大学病院を選ぶことも検討しましょう。
まとめ:失敗しない矯正歯科選びのために
矯正治療は長期間にわたり、費用も決して安くありません。だからこそ、信頼できる矯正歯科を選ぶことが非常に重要です。
この記事でご紹介した10のポイントを参考に、あなたに合った矯正歯科を選んでください。特に重要なのは以下の点です。
- 日本矯正歯科学会の認定医が在籍しているか
- 矯正治療に必要な設備が整っているか
- コミュニケーションが取りやすいか
- 治療計画と費用が明確か
- 通いやすい場所にあるか
また、初診相談は複数の医院で受けることをおすすめします。比較することで、自分に合った医院を見つけやすくなります。
矯正治療は決して簡単なものではありませんが、適切な医院を選び、医師の指示をしっかり守ることで、美しい歯並びと健康的な噛み合わせを手に入れることができます。
美しい笑顔は人生を豊かにしてくれます。この記事が、あなたの矯正歯科選びの一助となれば幸いです。
詳しい相談や矯正治療についてのご質問は、ぜひみなみもりまちN矯正歯科までお気軽にお問い合わせください。日本矯正歯科学会認定医が、あなたに最適な治療プランをご提案いたします。






