「一期治療にマウスピース矯正って、どうなんですか?」
以前の私なら「基本的には使いません」とお答えしていたと思います。しかし、今は少し違います。
最近では、**インハウスアライナー(院内製作アライナー)**を自院で導入したこともあり、一期治療への活用可能性が見えてきました。

これまでの考え方「一期治療にはアライナーは不向き」

  • 一期治療は、顎の成長をコントロールし、歯列全体の発育を導くステージ
  • 使用される主な装置:
    • 顎外固定装置(ヘッドギア・フェイスマスク)
    • 急速拡大装置(RPE)
    • 筋機能訓練装置(MFT補助装置)
  • アライナーは「歯を並べる」ことに特化した装置で、顎骨の成長誘導には不十分とされていた
  • 装着時間の管理が小児には難しい → 効果が安定しないという懸念

私の考えが変わった理由

アライナー技術の進化

  • 新しい素材と精密なスキャニング技術により、予測可能な微細移動が可能に
  • 矯正CADソフトの進化で、計画の自由度と精度が向上

インハウスアライナーの導入

  • 自院でスキャン・デザイン・模型のプリント・アライナーの製作が完結
  • 従来よりも柔軟にアライナーが提供可能に
  • ステージごとの調整・変更がすぐにできるため、小児期の変化にも即応できる
  • 限定的な目的(前歯の整列や保隙)であれば、非常に扱いやすい治療選択肢

治療目標の明確化と“段階的導入”という考え方

  • 顎の成長誘導は従来通りヘッドギアやRPEで
  • その後の微調整や保定にアライナーを活用することで、より快適な治療体験を提供
  • 「すべてをアライナーで行う」のではなく、必要なところだけ使うという視点

保護者・本人の理解と協力度

  • 見た目を気にする小学生や中高学年の子どもにとって、目立ちにくいアライナーは大きな魅力
  • 家庭での装着管理ができる場合、従来の装置よりQOL(生活の質)が高い

アライナーを一期治療で活用できる具体的なケース

  • RPEによる拡大後、前歯の排列を整えるステージで
  • 上顎前突症例で、ヘッドギア後の微調整・保隙に使用
  • 将来的に二期治療を予定している患者において、前処置・準備的介入として
  • 叢生や空隙が軽度で、顎の誘導を必要としない患者

まとめ|“インハウスアライナー”が開いた新たな可能性

アライナーは、一期治療の「主役」ではないかもしれません。
けれど、成長を妨げず、歯列を整える手段としての価値は確かにあります。
特にインハウスアライナーの登場によって、もっと柔軟に・個別に対応できる治療の選択肢が広がったことは間違いありません。
今後も「その子にとって最適な手段」を追求し、固定観念にとらわれない矯正治療を提供していきたいと思います。
みなみもりまちN矯正歯科