歯並びの悩みを解決するために矯正歯科を検討されている方は多いでしょう。しかし、どの歯科医院を選べばよいのか迷ってしまうことも少なくありません。

矯正治療は数年にわたる長期的な治療であり、費用も決して安くはありません。だからこそ、信頼できる矯正歯科医院を選ぶことが非常に重要なのです。

私は矯正歯科認定医として長年患者さんの治療に携わってきました。その経験から、失敗しない矯正歯科選びのポイントをお伝えします。

矯正歯科と一般歯科の違いとは?

まず最初に知っておきたいのは、矯正歯科と一般歯科の違いです。

矯正歯科は歯並びや噛み合わせの治療に特化した専門的な診療科です。一方、一般歯科は虫歯や歯周病などの治療を中心に行っています。この違いを理解することが、適切な医院選びの第一歩となります。

矯正歯科専門医院では、矯正治療に特化した設備が整っており、専門的な知識と技術を持つ歯科医師が治療を行います。そのため、複雑な症例にも対応できる高い技術力を持っていることが多いのです。

一般歯科で矯正治療を行っている場合、大きく分けて次の2つのパターンがあります。

  • 院長自身が矯正治療も行っている
  • 特定の曜日に大学病院などから矯正歯科医が来て治療を行っている

もちろん、一般歯科でも優れた矯正治療を提供している医院はあります。しかし、矯正歯科を専門とする歯科医が常駐している医院の方が、一貫した治療を受けられる可能性が高いでしょう。

あなたはどんな治療を望んでいますか?

矯正治療は長期間にわたるため、担当医との信頼関係が非常に重要です。矯正専門医が常駐している医院なら、同じ医師による一貫した治療が受けられるメリットがあります。

日本矯正歯科学会の認定医・専門医とは?

矯正歯科医を選ぶ際の重要な基準として、「日本矯正歯科学会の認定医・専門医」の資格があるかどうかを確認することをお勧めします。

日本矯正歯科学会は、歯科矯正学の発展と国民の健康増進を目的とした学会です。この学会が認定する資格には、認定医、専門医、研修指導医、臨床医などがあります。

認定医になるためには、5年以上の研修と症例審査に合格する必要があります。具体的には、以下の条件を満たす必要があるのです。

  • 歯科医師であること
  • 5年以上日本矯正歯科学会の会員であること
  • 指定の研修機関において矯正歯科基本研修と臨床研修を5年以上修了していること
  • 矯正歯科臨床の論文を発表していること

さらに専門医は、認定医の資格を持ち、より高度な医療技能と経験、専門知識を有する歯科医師です。専門医の資格を取得するには、認定医としての実績に加え、筆記試験と症例審査に合格する必要があります。

これらの資格は5年ごとに更新が必要で、継続的な研修や症例報告が求められます。つまり、最新の知識と技術を維持していることの証明となるのです。

認定医や専門医の資格を持つ歯科医師を選ぶことで、一定水準以上の矯正治療を受けられる可能性が高まります。

日本矯正歯科学会のホームページでは、認定医・専門医を検索することができます。お住まいの地域で探してみるとよいでしょう。

失敗しない矯正歯科選びの5つのポイント

では、具体的に矯正歯科を選ぶ際のポイントを5つご紹介します。

1. 日本矯正歯科学会の認定医・専門医が在籍しているか

前述したように、日本矯正歯科学会の認定医・専門医の資格を持つ歯科医師が在籍しているかどうかは、医院選びの重要な基準です。

認定医・専門医の資格は、矯正治療に関する一定の知識と技術を持っていることの証明になります。特に専門医は、より高度な症例にも対応できる技術を持っていると考えられます。

日本矯正歯科学会のホームページで認定医・専門医を検索できますので、通院を検討している医院の歯科医師が資格を持っているか確認してみましょう。

2. セファログラムなどの診断設備が整っているか

矯正治療を適切に行うためには、正確な診断が不可欠です。そのためには、セファログラム(頭部X線規格写真)撮影装置などの診断設備が整っていることが重要です。

セファログラムは、顔面と頭部のX線写真から、上下のあごの大きさとそのズレ、あごのかたち、歯の傾斜角度、口もとのバランスなどを分析するために必要な検査です。

矯正歯科専門医院では、治療前・治療後にセファログラムを撮影し、骨格の成長方向や量、歯の移動距離などを把握して、客観的な根拠に基づいた治療を行います。

初回相談時に、どのような検査を行うのか、どのような設備があるのかを確認してみるとよいでしょう。

3. 治療計画と費用が明確に説明されるか

矯正治療は長期間にわたり、相応の費用がかかります。そのため、治療計画と費用が明確に説明されることは非常に重要です。

信頼できる矯正歯科医院では、初回相談時に以下のような説明があるはずです。

  • 現在の歯並びや噛み合わせの状態
  • 治療によって期待できる効果
  • 治療期間の目安
  • 治療費の総額と支払い方法
  • 治療のリスクや注意点

これらの説明がなく、すぐに治療を勧められる場合は注意が必要です。

また、矯正治療には様々な方法があります。自分の状態や希望に合った治療法を複数提案してくれる医院を選ぶとよいでしょう。

4. コミュニケーションが取りやすいか

矯正治療は長期間にわたるため、担当医とのコミュニケーションが取りやすいことも重要なポイントです。

初回相談時に、以下のような点をチェックしてみましょう。

  • 質問にわかりやすく答えてくれるか
  • 患者の希望や不安に耳を傾けてくれるか
  • 専門用語を使いすぎず、理解しやすい説明をしてくれるか
  • 強引な勧誘がないか

あなたの不安や疑問に丁寧に答えてくれる医師を選ぶことで、長期間の治療をスムーズに進めることができるでしょう。

5. 通院のしやすさと診療日・時間

矯正治療は通常、1ヶ月に1回程度の通院が必要です。そのため、通院のしやすさも重要な選択基準となります。

以下のような点を考慮してみましょう。

  • 自宅や職場・学校からのアクセスの良さ
  • 診療日・診療時間が自分のスケジュールに合っているか
  • 予約の取りやすさ
  • 駐車場の有無

特に診療日については、月の半分以上診療している医院を選ぶことをお勧めします。矯正装置のトラブルなど緊急時の対応も考慮すると、診療日が多い方が安心です。

また、平日は仕事や学校で通院が難しい方は、土日診療や夜間診療を行っている医院を選ぶとよいでしょう。

矯正治療の種類と特徴

矯正治療には様々な種類があります。自分に合った治療法を選ぶためにも、それぞれの特徴を理解しておきましょう。

ワイヤー矯正(表側矯正)

最も一般的な矯正方法で、歯の表側に装置を付けて治療します。金属製のブラケットとワイヤーを使用するタイプが主流ですが、目立ちにくい白いセラミック製のブラケットを選ぶこともできます。

ワイヤー矯正のメリットは、複雑な症例にも対応できること、治療の自由度が高いこと、比較的費用が抑えられることなどです。一方、装置が目立つこと、食事制限があること、口内炎ができやすいことなどがデメリットとして挙げられます。

裏側矯正

歯の裏側に装置を付ける矯正方法です。表側矯正と同様の治療効果が期待できますが、外からは装置が見えないため、見た目を気にする方に人気があります。

裏側矯正のメリットは、装置が見えないこと、複雑な症例にも対応できることです。デメリットとしては、費用が高いこと、舌に当たって話しにくいことがあること、調整が難しいため治療期間が長くなる可能性があることなどが挙げられます。

マウスピース矯正

透明なマウスピース型の装置を使用する矯正方法です。装置を取り外すことができるため、食事や歯磨きの際に不便がありません。

マウスピース矯正のメリットは、装置が目立たないこと、取り外しができるため食事制限がないこと、口内炎ができにくいことなどです。デメリットとしては、複雑な症例には向かないこと、装置の装着時間が守れないと効果が出にくいこと、費用が高いことなどが挙げられます。

どの矯正方法が最適かは、歯並びの状態や生活スタイル、予算などによって異なります。複数の治療法について説明を受け、自分に合った方法を選びましょう。

初回相談で確認すべきこと

矯正歯科の初回相談では、どのようなことを確認すればよいのでしょうか。以下のポイントをチェックしてみましょう。

現在の状態と治療の必要性

まず、現在の歯並びや噛み合わせの状態について詳しく説明を受けましょう。なぜ矯正治療が必要なのか、治療しない場合どのようなリスクがあるのかを理解することが大切です。

また、矯正治療の目標についても確認しましょう。見た目の改善だけでなく、噛み合わせの機能改善も重要な目標です。

治療計画と期間

具体的な治療計画と期間について説明を受けましょう。どのような装置を使用するのか、治療期間はどのくらいかかるのか、通院頻度はどのくらいかなどを確認します。

また、治療後の保定期間についても確認しておきましょう。矯正治療後は、歯が元の位置に戻らないようにリテーナー(保定装置)を使用する必要があります。保定期間や方法についても事前に理解しておくことが重要です。

費用と支払い方法

矯正治療の総費用と支払い方法について、明確な説明を受けましょう。治療費には初診料、検査費、装置代、調整料、保定装置代などが含まれます。

また、分割払いが可能かどうか、医療費控除の対象になるかどうかなども確認しておくとよいでしょう。

リスクと副作用

矯正治療に伴うリスクや副作用についても説明を受けましょう。例えば、歯根吸収(歯の根が短くなること)、歯肉退縮、顎関節症状、虫歯や歯周病のリスク増加などが考えられます。

これらのリスクを理解した上で、どのように予防・対処するかを確認しておくことが大切です。

治療中の注意点

矯正治療中の食事制限や口腔ケアの方法、装置のトラブル時の対処法などについても確認しておきましょう。

特に、硬いものや粘着性のあるものを避けるなどの食事制限や、丁寧な歯磨きの必要性について理解しておくことが重要です。

認定医が教える!矯正歯科選びで失敗しないために

最後に、矯正歯科認定医として、矯正歯科選びで失敗しないためのアドバイスをいくつかお伝えします。

複数の医院で相談を

一つの医院だけでなく、複数の医院で相談することをお勧めします。それぞれの医院の雰囲気や医師の説明の仕方、提案される治療法などを比較することで、自分に合った医院を見つけやすくなります。

初回相談は無料で行っている医院も多いので、積極的に活用しましょう。

症例写真をチェック

可能であれば、その医院で治療を受けた患者さんの症例写真(ビフォーアフター)を見せてもらいましょう。自分と似たような症例の治療結果を確認することで、治療後のイメージがつかみやすくなります。

ただし、症例写真はあくまでも参考であり、同じ結果が得られるとは限らないことを理解しておきましょう。

患者の声を参考に

その医院で治療を受けた患者さんの声も参考になります。医院のホームページや口コミサイトなどで確認してみるとよいでしょう。

特に、治療の満足度だけでなく、医師やスタッフの対応、通院のしやすさなどについての意見も参考になります。

無理な治療計画には注意

非常に短い治療期間や、極端に安い費用を提示される場合は注意が必要です。矯正治療は時間をかけて慎重に行うべきものであり、無理な治療計画は後々問題を引き起こす可能性があります。

複数の医院で相談し、治療計画や費用を比較することで、適切な治療を見極めましょう。

担当医との相性を重視

長期間の治療となるため、担当医との相性も重要です。質問にわかりやすく答えてくれる、患者の希望や不安に耳を傾けてくれるなど、コミュニケーションが取りやすい医師を選びましょう。

初回相談時の対応は、その後の治療姿勢を反映していることが多いので、しっかりと見極めることが大切です。

まとめ:失敗しない矯正歯科選びの5つのポイント

矯正歯科選びで失敗しないための5つのポイントをおさらいしましょう。

  • 日本矯正歯科学会の認定医・専門医が在籍しているか:矯正治療に関する一定の知識と技術を持っていることの証明になります。
  • セファログラムなどの診断設備が整っているか:正確な診断のためには、適切な設備が必要です。
  • 治療計画と費用が明確に説明されるか:長期間の治療と相応の費用がかかるため、明確な説明が重要です。
  • コミュニケーションが取りやすいか:長期間の治療を円滑に進めるためには、医師との良好なコミュニケーションが不可欠です。
  • 通院のしやすさと診療日・時間:定期的な通院が必要なため、通いやすい医院を選ぶことが重要です。

矯正治療は長期間にわたる治療であり、決して安くない投資でもあります。だからこそ、信頼できる矯正歯科医院を選ぶことが非常に重要なのです。

この記事でご紹介したポイントを参考に、ぜひ自分に合った矯正歯科医院を見つけてください。美しい歯並びと健康的な噛み合わせを手に入れるための第一歩として、慎重に医院選びを行いましょう。

みなみもりまちN矯正歯科では、日本矯正歯科学会認定医による専門的な矯正治療を提供しています。大阪メトロ堺筋線「南森町駅」より徒歩1分、JR東西線「大阪天満宮駅」より徒歩3分と通院にも便利な立地です。初回相談は無料ですので、矯正治療をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

詳細はみなみもりまちN矯正歯科のホームページをご覧ください。

著者情報

院長 農端 健輔

経歴

2007年大阪歯科大学 卒業
2012年大阪歯科大学大学院私学研究科博士課程修了
2012年大阪歯科大学歯科矯正学講座において助教として勤務
2016年日本矯正歯科学会 認定医取得
2017年みなみもりまちN矯正歯科 開設

所属団体

近畿東海矯正歯科学会
日本矯正歯科学会
日本顎変形症学会
日本口蓋裂学会
World Federation of Orthodontists

みなみもりまちN矯正歯科